セミナー
第44回 日本福祉のまちづくり関西セミナー報告
「環境計画における福祉的視点を目指して」
開催日:2016年5月30日(月) 18:00 〜 19:30
場 所:常翔学園大阪センター 毎日インテシオ3階302
講 師:足立 哲氏(和歌山大学名誉教授)
場 所:常翔学園大阪センター 毎日インテシオ3階302
講 師:足立 哲氏(和歌山大学名誉教授)
今回のセミナーは3月末に和歌山大学を退官された足立先生をお招きして、
これまで取り組んでこられた福祉のまちづくりに関する研究についてご講演をいただきました。
建築計画の中で最低基準を定めるマジョリティは健常者が対象である状況から、 多文化共生、LGBTへの配慮も含めたマイノリティへの暖かい目を持った福祉研究者の視点を持ち続け、 海外にも示していく重要性に言及されたことが印象的でした。 当日は30名の参加者があり、活発な意見交換がなされました。
建築計画の中で最低基準を定めるマジョリティは健常者が対象である状況から、 多文化共生、LGBTへの配慮も含めたマイノリティへの暖かい目を持った福祉研究者の視点を持ち続け、 海外にも示していく重要性に言及されたことが印象的でした。 当日は30名の参加者があり、活発な意見交換がなされました。
まず「環境計画学における福祉的視点」として、1960年代に関西大学、
荒木兵一郎先生のもとで生態学的研究に取り組み、1970年代以降、建築学会の
「ハンディキャップト小委員会」「ノーマライゼーション小委員会」に関わり、
ハードとソフトの関連性についての研究を行い、1993年「兵庫県立福祉のまちづくり研究所」
での研究にも携わってこられました。
福祉の街づくりの系譜は、「基本的人権の保障」:アクセシビリティ、「社会的包摂」:ID、 「バリアフリーからユニバーサルデザインへ」、そして1980年代に「福祉のまちづくり要綱」、 1990年代に「要綱から条例へ」、1994年「ハートビル法」へと進行してきました。 その中で、環境計画における高齢者の「環境行動研究」、「高齢者能力と環境ほかの適応関係」 の研究を進めてこられました。1970年代の高度成長期には機能第一、効率重視、 車優先の社会形成が進み、交通弱者が出現する中で、「老人向け特区的公営住宅」、 「大阪駅前歩道橋の利用」を対象とした研究を行われましたが、当時の建築学会では高齢者、 障害者研究は極端に少ない状況でした。その後、1978年に米国に移り、研究活動を通じて 「環境デザインの重要性」:総合的計画、「環境デザイン学会」:学際的学会の認識を深めて 帰国されました。
帰国後、1980年から関西大学に勤務し、「視覚障害者の安全歩行」「知的障害の居住環境研究」 などを発展させて「徘徊などの行動特性の環境行動的研究」、1993年 「痴呆性老人の行動特性に応じる生活空間条件の建築計画学的研究」をまとめられました。 現在では社会的位置づけが高まっていますが、当時としては先駆的な研究でした。その後、 1996年に和歌山大学に移り、「大阪老人ホーム建替え時の高齢者環境移行」や1998年国際共同研究による 「認知症の共同研究」に関わり、国によって状況が違いますがユニバーサルな部分には 普遍的なものがあることに言及されました。一方、PEAP日本版の開発では「認知症高齢者が安心できる ケア環境づくり」や、みなべ、上富田、白浜、田辺などの自治体における住民参加型の福祉のまちづくりや、 高野山での「交通バリアフリー基本構想」にも関わってこられました。
環境計画における福祉的視点は、超高齢化の進展により認知症の理解・対応が課題となる一方、 計画対象も肢体不自由(車椅子)から社会・文化的少数派(多文化共生、LGBT等)まで拡大しています。 また、IT技術の利用は介助機器、ロボット化、通信情報システムへと技術的なツールも広がっており、 いずれ福祉的視点は言わずもがなという時代が到来することを確信されました。
意見交換では、21世紀の日本の福祉研究、最新の行動研究は世界でもトップクラスにありますが 国内で閉じているのが問題であること、韓国、中国、マレーシアがどんどん海外に出てきているのと対照的であり、 日本の研究も特に若い人がどんどん海外にも出て行くことがこれから重要であることが指摘されました。
福祉の街づくりの系譜は、「基本的人権の保障」:アクセシビリティ、「社会的包摂」:ID、 「バリアフリーからユニバーサルデザインへ」、そして1980年代に「福祉のまちづくり要綱」、 1990年代に「要綱から条例へ」、1994年「ハートビル法」へと進行してきました。 その中で、環境計画における高齢者の「環境行動研究」、「高齢者能力と環境ほかの適応関係」 の研究を進めてこられました。1970年代の高度成長期には機能第一、効率重視、 車優先の社会形成が進み、交通弱者が出現する中で、「老人向け特区的公営住宅」、 「大阪駅前歩道橋の利用」を対象とした研究を行われましたが、当時の建築学会では高齢者、 障害者研究は極端に少ない状況でした。その後、1978年に米国に移り、研究活動を通じて 「環境デザインの重要性」:総合的計画、「環境デザイン学会」:学際的学会の認識を深めて 帰国されました。
帰国後、1980年から関西大学に勤務し、「視覚障害者の安全歩行」「知的障害の居住環境研究」 などを発展させて「徘徊などの行動特性の環境行動的研究」、1993年 「痴呆性老人の行動特性に応じる生活空間条件の建築計画学的研究」をまとめられました。 現在では社会的位置づけが高まっていますが、当時としては先駆的な研究でした。その後、 1996年に和歌山大学に移り、「大阪老人ホーム建替え時の高齢者環境移行」や1998年国際共同研究による 「認知症の共同研究」に関わり、国によって状況が違いますがユニバーサルな部分には 普遍的なものがあることに言及されました。一方、PEAP日本版の開発では「認知症高齢者が安心できる ケア環境づくり」や、みなべ、上富田、白浜、田辺などの自治体における住民参加型の福祉のまちづくりや、 高野山での「交通バリアフリー基本構想」にも関わってこられました。
環境計画における福祉的視点は、超高齢化の進展により認知症の理解・対応が課題となる一方、 計画対象も肢体不自由(車椅子)から社会・文化的少数派(多文化共生、LGBT等)まで拡大しています。 また、IT技術の利用は介助機器、ロボット化、通信情報システムへと技術的なツールも広がっており、 いずれ福祉的視点は言わずもがなという時代が到来することを確信されました。
意見交換では、21世紀の日本の福祉研究、最新の行動研究は世界でもトップクラスにありますが 国内で閉じているのが問題であること、韓国、中国、マレーシアがどんどん海外に出てきているのと対照的であり、 日本の研究も特に若い人がどんどん海外にも出て行くことがこれから重要であることが指摘されました。
(文責:難波 健)
〈セミナーの様子〉
〈講演する足立氏〉
バックナンバー
- 第44回
- 「環境計画における福祉的視点を目指して」
- 第43回
- 「日本、香港の高齢者・障害者の移動の現状と将来」
- 第42回
- 「当事者参加によるバリアフリーの到達点と今後の課題」
- 第41回
- 「大阪都心部のサイン環境からユニバーサルデザインを考える」
- 第40回
- 「車椅子の昨日・今日・明日
〜パーソナル・モビリティの進化と暮らしの変化〜」 - 第39回
- 「弱者のQOL向上を通して学ぶこと」
- 第38回
- 「みんなで語ろう、車椅子の歴史から見る ひと・もの・くらし」
- 第37回
- 「災害情報とバリアフリーな移動技術に関するセミナー」
- 第36回
- 「被災者の生活再建と復興まちづくり
〜阪神・淡路の経験を東北の被災地に生かすために〜」 - 第35回
- 「生きていく」上映会&ディスカッション
- 第34回
- 光と音とサインのユニバーサルデザインを考える
- 第33回
- 「生活維持のための地域公共交通の実現」
- 第32回
- 「障害者権利条約のトピックスについて」
- 第31回
- 淡路島の施設見学会とトーク 「癒しのユニバーサルデザインを考える」
- 第30回
- 「バリアフリー新法でまちはこう変わる」
- 第29回
- 「神戸ユニバーサルツーリズム みんな遊びにでかけよう!」
- 第28回
- 「外出したい」という思いの実現に向けて−情報案内からのアプローチ−
- 第27回
- 地域活動支援センター「ちのちのクラブ」ライブ & トーク
- 第26回
- 「心の障がいのある人も安心して住まえる環境づくり」
- 第25回
- 「福祉移送サービスの新展開」
- 第24回
- 「市民力による福祉の交通まちづくりの推進に向けて」
- 第23回
- 「『福祉のまちづくり条例』とかかわって」
- 第22回
- 「市民参加の交通バリアフリー」
- 第21回
- 「スポーツから考えるユニバーサルデザインシンポジウム」
- 第20回
- 「視覚障害を理解する」
- 第19回
- 「福祉のまちづくりに関する討論会」
- 第18回
- 「交通バリアフリー比較体験コース」
- 第17回
- 「福祉を評価すること」
- 第16回
- 「福祉のまちづくり条例改正〜大阪府・兵庫県・滋賀県の報告」
- 第15回
- 「交通バリアフリーへの人間工学からのアプローチ」
- 第14回
- 「ユーザーの立場から見た福祉のまちづくりの現状」