日本福祉のまちづくり学会関西支部

 
セミナー

第27回 日本福祉のまちづくり関西セミナー報告  
「心に障がいのある人も安心して住まえる環境づくり」

―2006年12月8日(金) ドーンセンター特別会議室(大阪市中央区)―

 精神障がいの方に参加していただき、自由な意見交換を通して、こころの障がいを知り、新たな気づきの場を創りたいと思い企画しました。
 精神障がいの方達によるバンド「ちのちのクラブ」のライブ&トークでは、こころの障害をもつ方からのメッセージをいただきました。年末の時期であるため参加者は28名でしたが、音楽にのせたメッセージとザックバランな意見交換により充実したセミナーになりました。

コーディネーター
大河内雅司氏(株式会社 地域計画・建築研究所)
講師・演奏
ちのちのクラブ
◆第1部/ 「ちのちのクラブ」ライブ&トーク


 

 

 
  ちのちのクラブによるライブは、アンコール曲を除いてすべてオリジナル曲によって構成され、とても素晴らしい演奏を聴かせてくれた。ある曲は精神障害のある仲間に対するメッセージを、またある曲は社会に対するメッセージであったりと、バラエティに富むナンバーを通じて、我々に精神障害のある人の暮らしを伝えるものであった。
 曲と曲の間には、ちのくらぶの歴史や曲の解説をしたり、メンバーそれぞれがこれまでの体験や現在の暮らしで感じていることなどを語ってくれた。特に仲間の自殺についての「一度死のうと思ったらそれが頭から離れない。こうなるともう誰にも止めることができない」という言葉にはとても強い衝撃を受け、様々なことを考えさせられた。

 交通系や建築系の多い関西支部メンバーにとっては、精神障害のある人の抱える生きにくさに対して、まちづくりとして何をしなければならないのか、何ができるのかということを考えさせられるライブ&トークであった。
 
◆第2部/ 「ちのちのクラブ」メンバーとの意見交換
4つのグループに分かれて行なった自由な意見交換の主な意見を、各グループごとにご紹介します。
◇グループ1/ ちのクラブ:2人、参加者:7人

参加者1:
・どういう病気かもわかっていなかったけれど、あってみると普通の人だなと思った。
ちのくらぶ:精神障害者になって、身体障害者、知的障害者の人が生活しやすい街になってほしいなと思うようになった。

・来てよかった、生きる力を感じた。歌の詩もよかった。

ちのくらぶ:
・精神障害者になって、身体障害者、知的障害者の人が生活しやすい街になってほしいなと思うようになった。

・統合失調症です。以前、精神分裂病と言われていた病気です。一番多い病気で錯乱とか幻聴とか 薬を飲んでいると大丈夫で、薬を飲んでいないと眠れなくなる。飲まないとより状態が悪くなる。

・私は、気分障害です。実態をわかってられる方は、少ないです。サラリーマンをしていて40歳で発病。過労が原因。そんなおりに、ちのクラブに出会った。団体行動が苦手だったのでバンドをしたかったができなかったが、ここでバンドに入ることになった。

・歌を始めたのは、自分たちの思い、気持ちを伝えたかった。ワーカーが整理した部分もありますが、聞きやすくなり、伝えたい部分をやっている。

・病院の先生もあまり知らないのではないか。あなたは、こういう病気で、こういう症状がでるよと、言ってもらえたらわかる。統合失調症と聞くとどのように対応していいかわからない。本人に、あなたは統合失調症ですよと伝えたらびっくりするので、伝えられないと思うんです。関係する雑誌が病院やデイケアにおいてあればいいのですが、適切な表現がなく偏見があり当事者に負担になるためにおいてくれない。

 

◇グループ2/ ちのクラブ:2人、参加者:6人

参加者Q:
精神障害者の介助者から地下鉄の割引に「身体」障害者と書かれているので、精神障害者の人は対象ではないのか?と感じると聞いたが、どう考えるか?
ちのくらぶA:
精神障害者を特定するのはとても難しいと思う。身体障害者手帳には写真を貼るが、精神障害者手帳には写真がない。現在新様式に切り替わり、写真入となったが、更新時期に来ないと変わらない。こういうこともあり、身体障害者に限っているのでは?また精神障害者もわざわざ手帳を見せて割り引いてもうおうとしないのではないか?
阪急、阪神、京阪は精神障害も割引、近鉄、南海はまだである。

参加者Q:
ちのくらぶの今後の活動目標はなにか?
ちのくらぶA:
薬の服用がきちんとできれば働くことが出来る。活動支援センターなどがなくてもよい町になるのが、バリアフリーだと思う。

参加者Q:
自立支援法になって何が変わったか?
ちのくらぶA:
年金生活や生活保護の生活は経済的に厳しい。

参加者(近畿大学・三星先生)
交通バリアフリー法は、社会整備基盤・環境や社会システムが障害を感じさせないまちにしていくことを目的としている。

 

◇グループ3/ ちのクラブ:1人、参加者:6人
参加者:
ライブの時、“生きよう”というメッセージがあったが、特に最近いじめによる自殺など自殺者が増加していることなどを考えても、これは精神障害者だけでなく、すべての人に当てはまるメッセージだと感じた。

参加者Q:住みよい町とはどのような町か?
ちのくらぶA:
こころのバリアーがないこと。特に会社(仕事)でこの病気のことを理解してもらい、働けることである。

参加者Q:こころのバリアを強く感じる場面とは?
ちのくらぶA:
やはり就労に関する場面である。ジョブコーチなどの就労支援制度があるとよい。

参加者Q:よく使う公共交通は何か?
ちのくらぶA:
病気によっていろいろである。狭いところや人混みがダメな人は電車には乗らないが、まったく問題ない人もいる。この10月から手帳に写真が貼られるようになったので、公共交通の割引がされやすくなった。

参加者:
自殺、社会での生きにくさ(まだまだ偏見があること)、就労などの問題があることがわかり、今後これらをどのように考えていくかが課題である。

 
◇グループ4/ ちのクラブ:2人、参加者:6人
参加者Q:交通バリアフリー法の改正に伴い、精神障害者も対象に含まれるようになった。まちづくりの中で特に配慮するべきことは何なのか?
ちのくらぶA:
精神障害は身体障害や知的障害と違い、一見では分からない。本人の病気の苦しみがほとんど知られていない。統合失調症の人等は、人ごみが耐えられなくなるときがある。例えば、ショッピングセンターに噴水やベンチがあれば、しんどくなった時にそこで回復できる。

参加者:
昔、職場に統合失調症の人がいて、どう接したらよいか分からなかった。症状が悪化すると休み、調子がよくなって復帰すると服薬をやめてしまい、また症状が悪化するの繰り返しだった。心に病のある人に対して今のような認識があれば、もっとかばってやれたのにと思う。

ちのくらぶスタッフ:
薬を飲むと楽になって、調子がよくなると薬をやめてしまう人が少なくはない。薬を飲むと副作用が出て、症状が治まるとその副作用がつらくて止めてしまうという人もいる。また、薬を飲むことが悪いことだと思い込んでいる人もおり、できるだけ飲みたくないので調子がよくなるとすぐ止めてしまうという人もいる。「薬飲んでいいんだよ。」「ゆっくり休めよ。」の声かけがあれば気が楽になるかもしれない。でも、職場で病気のことがばれたら、辞めさせられると思って、隠す人が多い。
ちのくらぶ:
うつ病と躁うつ病は違う。うつ病は皆が気を使ってくれる。躁うつ病の場合、躁の時に本人も周りの人も直ったと勘違いしてしまうことが多い。うつの状態の時にできなかった仕事をがんばってやろうとしたり、何でもできるような感覚になるのでどんどん仕事を引き受けてしまい、それがストレスとなって反動としてかえってくる。
参加者:
年をとって、子供がうるさいと疲れるようになってきた。精神疾患の人も同じだろうと思う。しかし、それをコントロールできるかできないかの違いがある。
ちのくらぶ:
コントロールができないだけではなく、そのつらさが他の人より強い。

参加者:
・今精神疾患のない人であっても、何かのきっかけでいつでもなりうる病気だと感じた。
今日は当事者の方から躁うつ病の話を聞けて、今まで知らなかったことを知ることができた。躁うつ病以外の統合失調症等の疾患についても、説明してもらえるとよかった。
 


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