―2004年6月16日(水) 福祉のまちづくり工学研究所― |
福祉のまちづくりにおいて、障害に応じた検討は不可欠である。今回は、国立神戸視力障害センターの協力を得て、視覚障害とはどの様なものなのかを教えていただき、疑似体験により理解を深めようというものである。当日は平成16年度の支部総会も行った。参加者は、会員外の方も含め34名であった。 |
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「視覚障害を理解する」
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久保明夫氏(
国立神戸視力障害センター主任生活支援専門職) |
厚生労働省の平成13年の調査によると、視覚障害者は30万人程度である。視覚障害の級は、視力と視野で決められ、網膜色素変性症が最も多い疾患である。 |
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他の障害に比べ高齢化は著しく、視覚障害だけでなく高齢化への対応も共に考えてほしいと話された。また点字が出来る人は全体の1割程度だとの調査結果も驚きであった。 |
最も多い疾患である網膜色素変性症を治す手段は、現在まだない。本人はいずれ視機能が落ちていくことを知りながら生活を送っている。久保氏はかつて病院で勤務していた経験から、医療以外の支援(家族のケアも含む)も必要で、重要であると強調された。 |
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《久保氏の講演の様子》 |
会場から触地図について質問があり、久保氏から大雑把な情報であり、触るだけでは分かりにくいので、センターでは触地図の訓練はしない。しかし、音声などの他の情報も組み合わせれば使いやすいと思うと提案された。 |
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「歩行訓練から考えること」
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原田敦史氏( 国立神戸視力障害センター生活支援専門職) |
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視覚障害者はどのように情報を得てまちを歩いているのかを教えていただいた。驚いたことは、センターでは視覚障害者誘導用ブロック(以下、点字ブロックとする)を使う歩行訓練はしていないということであった。その理由として、すべての道にはない現状で、それに頼る歩行は危険であること、先天性の人以外は、足裏で凹凸をきちんと感知できる人は少ないことを挙げられた。 |
そもそも視覚障害の中で全盲は1、2割と言われ、その他はロービジョン(弱視)である。ロービジョン者は、コントラストがはっきりしていれば歩ける人も多いという。横断歩道の縦のラインをガイドとして歩いていた人がとても多かったようである。 |
《原田氏の講演の様子》 |
また視野が狭い人は、大きなサインや高い位置にある信号、看板などは見えない。鉄道会社によってばらばらである色が統一されると大変歩きやすい(緑だときっぷ売り場など)と話された。 |
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「視覚障害当事者として」
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小野耕一氏(
国立神戸視力障害センター非常勤講師) |
国立神戸視力障害センターで訓練を受け、現在はセンターでパソコンの非常勤講師をしている小野耕一氏に、2級の障害手帳を持つ視覚障害者としてお話しいただいた。 |
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視力は眼鏡で矯正した検査では0.3程度が出るが、視野が狭いために実際はそれほど見えていない。センターでは、音声案内を使ってパソコンを操作する方法を教えている。ご自身がどのように見えているかを、我々が想像しやすいように具体的に説明していただいた。夜間は特に見えにくいので、小野氏はヘッドライトなどの強い光に照らされた点字ブロックをガイドとして使うこともあるようである。 |
会場から、駅などの音声案内は本当に使いやすいのかという質問があり、小野氏はよく利用する駅では必要ないが、初めての駅では利用していると答えた。 |
《質問に答える小野氏》
(左から小野氏、久保氏、原田氏) |
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「視覚障害 疑似体験」 |
原田氏とセンターの研修生により、視覚障害者の手引き方法を教えていただき、二人一組になって建物内を歩いた。広い廊下だけではなく物がたくさん置かれている場所もあり、戻ってきた参加者はとても怖かった様子であった。講師からは、アイマスクをしたのでまったくの暗闇であったが、実際は光などで周囲の様子を感じることが出来るとの話があった。 |
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《手引きの方法を教える》 |
《疑似体験の様子》 |
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