4月15日に行われたセミナーは、参加される方々が中心となった討論会でした。
「A.移動に関すること」 「C.住環境整備」 「D.総合教育」という3つの分科会を行いました。 なお「B.建築物のバリアフリー」は参加者が少なかったため中止しました。 |
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A.移動に関すること
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コーディネーター:藤村安則氏(中央復建コンサルタンツ) |
近畿大学・三星昭宏氏、大阪大学・新田保次氏をはじめ、24名の参加者で行われました。 |
兵庫県立福祉のまちづくり工学研究所・谷内久美子氏より「スペシャル・トランスポート・サービス(STS)の現状とその課題」として、
兵庫県下の福祉タクシーと移送サービスの事業者へのアンケート調査より、利用者、一日あたりのサービスの実施回数、利用料金と事業の採算性についての報告がありました。(資料あり) |
日建設計・児玉健氏よりバリアフリー化に関する最近の動きとして京都初の基本構想であるJR山科駅と阪急桂駅のバリアフリー計画を説明していただきました。駅前広場にバスが正着できる構造を検討したことなどを報告していただきました。
また新大阪駅と駅周辺のバリアフリー化の計画が進んでいることを説明いただきました。(資料あり)
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来年2月開港の中部新空港の計画において、ユニバーサルデザイン研究会として当事者参加の姿勢で検討を進めてきました。また、
大阪府にある国際障害者交流センター「 ビッグ・アイ」の設計時にトイレのモックアップを用いて当事者と仕様を確認しながら設計したことを紹介していただきました。(資料あり) |
大阪大学の新田氏より、今後のバリアフリー化に向けて、「バリアフリーテキスト」と「バリアフリー専門委員会編・テキスト」を用いて、バリアフリー基本構想策定における市民参加の現状と取り組み方(手法)について話していただきました。
このテキストは、いま出版に向けて準備中であるそうです。(資料あり) |
大阪市立大の岡田氏から公共サインの現状と課題、三星氏より移動に関する現状の課題と展望について話をされました。 |
ディスカッションでは、高齢者・障害者の訴えを聞いてくれるところがないという話題に、パブリックコメントの募集が自治体でされているが、あまり集まらないことも多い。パブリックコメントに引きずられるのではなく、協議できる仕組みづくりが大切であると議論が交わされました。岡山ではテレビ局とタイアップして市民参加をする案などもあるようです。兵庫県では庁内の横断的な取り組みを意図して本年4月よりユニバーサル社会担当課が発足しました。 |
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C.住環境整備
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コーディネーター:野山恭一氏(ノヤマ住環境相談所) |
大阪市援助技術研究室の米崎二朗氏、金井謙介氏、設計事務所の方を中心に10名の参加者で行われました。 |
兵庫県立福祉のまちづくり工学研究所・金承喜氏より、介護支援専門員(ケアマネジャー)の意識調査に関するアンケート結果より、住宅改修に関しては意識は高いが建築に関する知識などの不足から大きなプレッシャーを感じているとほうこくがありました。(資料あり) |
野山氏は施工者として関わった住宅改修に、多くの業種が関わり、それがなくては満足のいく改修はできなかったと話されました。 |
京都府立大・西尾幸一郎氏から、知的障害児の住宅改修に関して、トイレが嫌いで、無理に連れて行くと中で暴れてしまうという事例に、トイレを広くすることで、問題なくトイレに行くようになったとの報告がありました。
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これは閉塞した空間に恐怖を感じるという、その子の状態を見抜けたからである。このように建築関係者だけでは築くことのできないことは多いということです。 |
住宅改修には設計者と当事者だけでなく、理学・作業療法士や医師、ホームヘルパーなど関係者をコーディネートする人が必要であり、それに適した専門職は事例によって異なるのだろうという結論でした。
今後ともこの問題については考えていきたいです。 |
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D.総合教育
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コーディネーター:杉原五郎氏(地域計画建築研究所) |
摂南大学・田中直人氏、大阪大学・飯田克弘氏、大阪脊髄損傷者協会・辻一氏、多淵支部長を中心に行政、コンサルタントなど15名で行いました。 |
総合教育のグループであるが、平日であることと働きかけが少なかったので現場の先生の参加がなかったことが残念だという声があがりました。 |
地域計画建築研究所・大河内雅司氏より、大阪市郊外の小学校3、4年生を対象に行われた福祉のまちづくりの総合学習に対する支援を紹介してもらいました。
単に子供の教育だけではなく、子供達が地域や大人たちに働きかけていくことで、学校が地域の中心となり、深いつながりができたことなどを報告していただきました。
(資料あり) |
摂南大学・田中氏から静岡県と神戸市で行った総合学習の事例を通して、子供が感覚で捉えている福祉のまちづくりの視点というのはとても鋭く、その表現も劇や歌、絵など様々な方法があると話されました。 |
こういうことからも、その子供達に教える先生の意識を変えていかなくてはならないのではないかという意見が出ました。積極的に関わっている先生、自治体も多く、兵庫県が出した「ひょうご こどもまちづくり読本」など立派なものも多くつくられている。しかし、つくっただけではなく、それを用いた公開授業や、現場の先生と学会メンバーなどの専門家との協議や社会実験などを通じて、モニタリングする必要があるという意見も出ました。(資料あり)
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大阪大学・飯田氏より、総合学習という分野横断的なものに取り組めるのは福祉のまちづくり学会ではないかという問題提起があり、学会としてこの問題にどのように関わっていくことができるかを考えていきたいと話されました。
今後、現場の先生にも入っていただいて、学会として学会員の人材情報の提供や、教材に関する情報提供など、どのような取り組みが求められ、行っていけるのかを話し合っていきたいと思います。(資料あり)
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《事務局より》
今回は関西支部初の討論会という形式で行いました。 たくさんの参加者を得て、思ったより会場が狭く、他グループの声が聞こえて議論に集中しづらい場面も多くありました。不手際をお詫び申し上げます。
しかし、このような状況にもかかわらず、参加者の皆様にはとても熱心に議論していただき、今後の学会・関西支部として何かできるのではないかと期待させるセミナーであったと思いました。
これらの議論は、今回だけで終わらずに、またセミナーという大きな会でなくても進めていきたいと思います。
参加者の皆様、この報告を読まれた方、これらの議論についてご意見をお寄せください(メールはこちら)。
事務局として整理し、ホームページで随時紹介して行きたいと思います。
まだ具体的に考えておりませんが、それぞれの議題についての小さな会合を開いていくというのはどうでしょうか? このことも含めて共に考えていきましょう! |
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これらセミナーの資料は、実費(送料込みで1000円)にてお送りすることができます。
事務局までご連絡ください。 |
なお、当初予定しておりました「B,建築物のバリアフリー」のグループは参加者が少なかったため、中止とさせていただきました。 |
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