◆第一部/ 地域交通を構成する交通手段の問題およびその解決 13:40〜15:15 |
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◆全域コミュニティバスとしての地域公共交通政策 竹内伝史氏(岐阜大学大学院) |
市町村で行われるコミュニティバスを概観し、自治体が地域の住民の足を確保しようとしたコミュニティバスの理念については良いと評価するものの、問題点として、次の4点があると指摘されました。
@ワンコインがもたらす地域不公平
A公平促進は公共資金投入拡大に向かう
B集客指向が路線バスとの競合を生む
C路線バス敗退が生む公共資金投入の天井しらず |
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これらの問題点の根源は、本来は、総合的な交通を用い、交通空白地域をどのように埋めるかが重要であるのに、コミュニティバスだけを取り出して議論・計画してしまった点にあると指摘されました。「路線バスあってのコミュニティバスである」ので、自治体は、路線バスとコミュニティバスを分けて考えるのではなく、すべて「コミュニティバス」と考えていくこと(全域コミュニティバス)が重要であると述べられました。
全域コミュニティバスの計画にあたっては、路線バスとコミュニティバスだけではなく、スクールバスや福祉有償運送など地域の交通、場合によっては、地域福祉計画や施設配置計画などの地域の他の計画を含んだ、地域公共交通計画(LTP)の立案が必要であることを強調されました。 |
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地域公共交通計画(LTP)は、非常に多岐にわたる総合的な政策となるため、個別の部局だけでは、提案することが難しい。そのため、地域公共交通計画(LTP)の立案に際しては、首長などの政策責任者が方向性を示すこと、すなわち、地域公共交通マスタープラン(LPT-MP)を立案することの必要性を指摘されました。なお、地域公共交通マスタープラン(LPT-MP)の詳細については、「自治体行政が公共交通サービスの提供に責任を持ち、公的資金を投入してでも政策的にそれを達成することの決断であり、それを地域住民の大多数の合意の下に市民や市民企業に対して宣言することである、と解説いただきました。 |
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◆過疎地有償運送の先に見えるもの 北川博巳氏(兵庫県立福祉のまちづくり研究所) |
過疎地で行われている交通確保の先進事例として、住民が主体となってバスを運行している事例や地域住民が計画に参加したゾーンタクシーの事例を紹介いただきました。以上の経験をもとに、過疎地の交通を考える上での特徴を次のようにまとめて下さいました。
・市町村が乗り気にならないと戦略が練れない
・地元の合意には意外と時間がかかる
・赤字の負担問題
・ニーズをうまく聞き出せば脈はある
・どこの地域の方と話しても「運転が危険な高齢者の方がいて、説得している」ことが話題
・市民参画・協働社会づくりの点では評価されるべきだが、協議会では反対されることも
・適切な支援があれば手を挙げる可能性がある(車両提供や資金援助) |
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さらに、過疎地有償運送のその先に見えるものとして、以下の点を挙げられました。
・高齢ドライバーも限界があり代替手段がいる
・まちおこしには移動が必要と認識すべき
・移動だけでなく、地域の見守りや安全の観点からも考慮してゆかねばならない
・閉じこもり・引きこもりの割合も近年高い
・免許を返したら逆にモラールが低下するかも
・地域の理解・行政の協力・適切なアドバイスが必要 |
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◆福祉有償運送の現状
猪井博登氏(大阪大学) |
福祉有償運送の法的位置づけを確認し、一般乗用旅客自動車運送事業(患者等輸送限定)など、類似の運送との違いを説明いただきました。さらに、福祉有償運送の登録団体数、車両数の統計から、福祉有償運送制度が創設された2006年度は急激な増加がみられたものの、その後はほとんど増加していないことを示されました。この背景には、福祉有償運送が儲からない事業であり、多くの事業者が赤字を抱えつつ運行していることを調査結果から示されました。さらに、三重県伊賀市で行った調査から、身体的にはバスが利用できるものの、バス停まで歩くことができないなどの理由により、福祉有償運送を使用している事例が多くみられたことを報告し、地域公共交通の計画が福祉有償運送の利用者数に影響を与えることを明らかにされました。 |
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以上をもとに、福祉有償運送の今後として、行政の役割が変化することを提起されました。これまで行政は、NPOなどが行っている福祉有償運送の事業を審査して、登録を与えるという役割でしたが、福祉有償運送の提供団体が増えない現状を打破するため、福祉有償運送を増加させる戦略立案実行、維持支援施策の実施を行うことが行政の役割として追加されるべきである、とご指摘いただきました。 |
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〈ご講演の様子 1 〉 |
〈セミナーの様子〉 |
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