【三星昭宏氏(近畿大学理工学部社会環境工学科)】
大阪府の福祉のまちづくり条例は、1992年に制定された。今回は、交通バリアフリー法とハートビル法の施行後、はじめて改正されたものである。 |
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改正の内容としては全体として、整備基準は厳しく、特定施設の範囲は広くなっている。今まで500uを超えるものが対象であったコンビニエンスストアが100uまで引き下げられ、特定施設に入ってなかった集会場・公衆便所が全て整備対象となった。また、開発公園や海岸保全施設も整備対象となっている。 |
三星氏は、当事者参加が必要かつ重要であると終始話された。施設が利用できるかどうかの検証は、当事者の方とともに現場で行なうことが必要である。そこではじめて気がつくことが、かなり多いと言われていた。 |
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【多淵敏樹氏(兵庫県立福祉のまちづくり工学研究所)】
兵庫県は全国に先駆けて、福祉のまちづくり条例を制定したため、唯一県名がつかない条例となっている。 |
今回の改正は二度目であり、一度目は1996年で阪神・淡路大震災を受けての改正であった。その2年前に制定されたハートビル法との整合性をはかることと、整備基準の強化を図った。震災で多くの駅が利用不可能となったこともあり、一日5000名の乗降客が利用する駅にエレベーターの設置を義務化した。
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今回の改正では、「人間サイズのまちづくり」を推進することと、交通バリアフリー法への対応を目的としている。福祉のまちづくり工学研究所は、条例の制定とともに福祉のまちづくりを技術的に支援するために設立され、全国的にも類を見ない研究所である。 |
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【田中直人氏(摂南大学工学部建築学科)】
滋賀県の「滋賀県住みよい福祉のまちづくり条例」は、ハートビル法が制定された後にできた初めての条例で、1994年に公布された。
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現在、各都道府県は条例の見直しを進めているが、滋賀県はユニバーサルデザインとして取り組みこととなった。「まちづくり」「ものづくり」「ひとづくり」の三本柱で進めている。
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まちづくりとして、「点検プログラム」というものを行っている。施設の優しさ度を利用者ではなく、施設管理者が自ら点検することで、意識を高めていくことを目的としている。評価は5つ星であらわされ、当初は3つ星を最高点として始めるが、最終的には5つ星を得ることができるように施設管理者が努力していくことをのぞんでいる。
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この「点検プログラム」が改良されながら、全国でも広まっていけばよいと考えている。滋賀県では、ユニバーサルデザイン懇話会や行動計画などによって、ハード面、ソフト面合わせた総合的な推進をはかっている。 |
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【ディスカッション】
会場からは、多くの質疑や話題提供があり、約3時間のセミナーが短く感じられた。参加者に答えていただいたアンケートには、「それぞれの先生が1回ずつセミナーをして欲しいくらいの内容であった」「時間が足りなくて、聞きたいことが聞けなかった」という内容もあった。 |
当事者からは、当事者参加が進んでいると言われているが、現実にはまだまだ出来ていないことが多いという意見も出された。三星氏からは、国際障害者交流センター(ビッグ・アイ)は、当事者参加をかなり真面目に行って、つくられた施設であると思う。(前回のセミナーはビッグ・アイで行われ、設計に関わられた田中氏から説明を受けて見学会も行った) |
また、大学関係者からは、当事者参加で行った研究成果を、取り入れることも当事者参加の一つとして捉えてもらってもいいのではないかという意見が出された。 |
多淵氏は、バリアフリーな施設をつくったとしても、スタッフの配慮や、施設の運営が悪いとバリアになる。姫路市では重点整備地区の報告書の中に、担当者教育の必要性を明文化するようにしたと話された。 |
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