日本福祉のまちづくり学会関西支部

 
セミナー

第32回 日本福祉のまちづくり関西セミナー報告  
障害者権利条約のトピックスについて

― 2009年6月18日(木) 学校法人常翔学園大阪センター 301教室―

 今回は障害者権利条約のトピックスについて、北野誠一先生を講師にお招きして、セミナーを行いました。 福祉関係の企業の方や研究者、学生など幅広い分野から41名の参加がありました。
  2006年に国連総会で採択された障害者権利条約は、2008年5月に20カ国の批准を経て効力を発生しました。日本は2007年9月に署名はしたものの、批准には至っていません。

講演/ 北野誠一氏(関西地域支援研究機構代表)  18:40〜20:10
  長年、障害者福祉の分野で関西を代表して活躍されている北野氏から、障害者権利条約の批准についての現状と課題を報告していただきました。
  1981年の国際障害者年をスタートとし、この四半世紀の間のどのような法的進歩が見られたのかという観点から話題を展開していただきました。
  中でも印象的であったのは、1979年の国際障害者年行動計画第63項に書かれている内容の素晴らしさです。北野氏も、その理念の素晴らしさを改めて説明してくださいましたが、当時の時代背景を考えても非常に先進的な文章であり、現在でもその内容が全く色褪せることなく、我々が目指すべき社会のあり方を指し示していると言えます。
 

 一方で、四半世紀を過ぎてもここに書かれている内容が達成できていない現状を鑑みると、我々の取り組みに問題があるとも北野氏は反省を踏まえて強調をされていました。障害のある人の「完全参加と平等」を達成するために、その1領域である福祉のまちづくりに関わる者として、改めてこの理念を心に刻んで真剣に取り組んでいかなければならないと感じました。
 

〈ご講演の様子 〉
〈セミナーの様子 〉
  表題の障害者権利条約の批准に関して、国に対して「簡単には批准させない」という姿勢を当事者側は取っているようです。これは簡単に批准してしまうと、他の権利条約のように中身のないものとなってしまい、それは障害のある人にとってマイナスになってしまうからです。
  批准の前にきちんと国内法の整備が必要だ、と言うご指摘は、非常に説得力を感じるものでした。
 
  その他の話題として、現在関わっている各自治体の政策策定に関する情報や、ADAや障害者自立支援法の成立過程における交渉の内実など非常に興味深い話題を多く話していただきました。全体を通して、障害のある人が「地域社会の中で普通の市民として生きることを妨げられている」現実に対して、何とか改善していきたいとする北野氏の情熱が感じられるセミナーでした。
  設定されていた時間があっという間に過ぎてしまうくらい引き込まれるお話であり、すべての参加者が「もっと話を聞きたい」と感じるくらい素晴らしいセミナーとなったのではないでしょうか。
  我々としても、福祉のまちづくりに関する実践や研究を進めていく上で、北野氏から学ぶべき点はまだまだあると感じ、この続編も今後企画したいと思います。
 


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